キヤノンD60から始まった

記憶媒体を「コンパクトフラッシュ」ではなく、1ギガまで容量がある「マイクロドライブ」にしようと思ったが「マイクロドライブ」はショックに弱く、安定性に欠けるらしい。

あんまり大きな容量だと「データが飛んでしまった時のダメージが大きいし、転送に時間がかかる」というアドバイスもあって128メガの「コンパクトフラッシュ」に落ち着いた。128メガを5枚買うと、640メガ、ちょうどCD1枚分の容量となる。

 ちなみにコンパクトフラッシュの場合、64メガのカードが1メガ当たりの単価が一番安く、およそ59円(新宿ヨドバシ価格)。32メガだと67円、128メガが63円、256メガが89円と上がり、512メガの場合は1メガ103円にもなる。マイクロドライブは1メガ34円とお買い得。(2003年『旅するカメラ』「キヤノンEOSD60を買う」より抜粋)

これは2002年に初めてのデジタル一眼レフEOSD60を買った時の話。その頃は512メガバイトのCFカードが52,736円していたことになる。びっくりだね。ちなみに2017年6月のヨドバシカメラでは、512ギガバイトのSDカードが28,630円(レキサーLSD512CBJP633)となっている。

メガからギガへ、およそ1000倍の容量アップで値段は半分だから、15年で1メガあたり2000分の1になったわけだ。

 考えたあげくに128メガバイト(8064円)を5枚選択したというのも隔世の感がある。たしかRAWデータで撮影するとカード1枚で70枚くらいしか撮れなくて、フィルムを交換するように頻繁にカードを交換していた。

画像もよく飛んだものだ。これは撮影しているはずなのに、パソコンにコピーしようとすると何もデータが入っていないというおそろしい状態だ。画像はあるはずなのだが、カード内のどこかでリンクが切れてしまって読み出せないということが、頻繁ではないにしてもたしかにあった。

そういう意味でも大容量のカードは怖くて使えなかったのだ。カメラとカードメーカーの相性はどの組み合わせがいいか、復旧ソフトは何がいいか、などという話題がカメラマンの中では定番だったものだ。

EOS D60は600万画素のデジタルカメラでボディ単体の価格はおよそ30万円だった。600万画素になったことでA4に印刷可能になり、雑誌用途に使いやすくなったわけで、2002年はある意味プロカメラマンのデジタル元年だったと言える。

しかし同等の性能のネガカラーフィルムは当時一本600円だったわけだから、一般の人にはまだピンとこないものだったに違いない。カメラマンとしては1990年後半、コダックのデジタル一眼レフが600万画素で600万円だった頃(1画素1万円だ!)を知っているだけにD60が出たときには安くなったものだと驚いた。

2003年というのは、フィルムカメラとデジタルカメラと出荷量がクロスした年だと言われている。一眼レフはまだまだフィルムカメラが健在だが、コンパクトカメラはデジタル化が急速に進んだ年だった2003年から2004年にかけて初めてデジタルカメラを手にしたという人も多いはずだ。

15年が過ぎ、今や携帯電話のカメラが1200万画素となり劇場公開の映画がiPhoneで撮影されるのだ。各メーカーがコンパクトカメラの売り上げに大苦戦しているというニュースをよく耳にする。

カメラはわざわざ持ち持ち歩かなくとも常時携帯するものになった。2016年発売のiPhone7plusはカメラメーカーにとっては白旗をあげたくなるような性能だ。広角と標準のふたつのレンズを搭載し、高速連写や4K動画まで撮れてしまう。

 そして2017年はついにミラーレス一眼レフがミラー一眼を超える性能になってしまった。ソニーα9である。秒間20コマ、高速AF、超高感度、しかも無音撮影。

 これまでスポーツや報道の世界で使われるカメラはキヤノンかニコンのどちらかであり、他に選択肢はないといってよかった。オリンピック会場では白い望遠レンズのキヤノンと、黒いレンズのニコンのどちらが多かったかが毎回話題になっていた。

ところが2020年の東京オリンピックではソニーが独占してしまう可能性が出てきた。可動式ミラーを使っている限り秒間20コマは物理的に不可能だろうし、無音ということはありえない。唯一ペリクル(半透明)ミラーを使いミラーを固定してしまうしか策はないだろう。

実は無音であることでスポーツ撮影の領域は一気に拡大するのだ。選手が集中するようなスタート前であるとか、ショットの前は撮影が禁じられている。ゴルフもテニスもボールがヒットするまではシャッターを切ってはいけないルールがある。しかし無音ならいつでもどこでも撮影が可能になる。これに類することは現場では数限りなくある。無音撮影は報道を大きく変えてしまうことだろう。

それにミラーレスであれば、画像をメモリ内に常時仮保存しておくことでシャッターを押した数秒前から記録することも可能だ。ドライブレコーダーが事故のショックがあると前後数十秒を記録再生できるのと同じことだ。シャッターは一瞬を切り取るものではなく、単なるきっかけを与えるものにすぎなくなる。

そもそも静止画を撮る必要なんてなくなってしまうかもしれない。テレビが8K放送になれば1コマあたりおよそ3500万画素のデータとなる。現在の最高級一眼レフと同じ画素数だ。しかも8K動画なら秒間24コマ。もはやシャッターという概念すらない。

スポーツカメラマンという職業があやうくなってしまう技術進化。数年先カメラははどうなっているのかまったく想像できない。個人的にはD60くらいで止まっていてほしかったな、などと思ってしまうのだった。

渡部さとる写真ワークショップ2B&H

江古田(練馬区)で14年間続けてきた「ワークショップ2Bは、事務所ビル建て 替えにより、場所を阿佐谷(杉並区)に移し、「H」(エイチ)と名前を変え年 月から新規にスタートしています。